2014年後半ごろから原油価格の下落が話題になっており、この機会に原油へ投資したいとお考えの方も多いと思います。
原油への投資というと、原油先物取引がイメージとして浮かびますが、先物取引は借金の可能性もある危険な取引です。
加えて、取引可能な業者も限られるなど、少々ハードルは高めです。
特にあなたが初めて原油へ投資を始める場合には、上場投資信託(ETF)や投資信託を利用するほうが手軽でリスクも低めです。
以下では原油に投資を行う上場投信として、WTI原油価格連動型上場投信を中心にご紹介します。
原油関係の上場投信や投資信託へ投資するには、証券口座の開設が必要です。
原油や金に投資を始める方法や、資産運用を行うまでの流れもあわせてご覧ください。
はじめに
最近、下落の著しい原油価格。
日本では同時に進んでいる円安の影響もあり、普通に生活する限りは原油安の影響はなかなか感じにくいものの、ガソリン価格の低下など、その影響が出始めています。
あなたがこのページをご覧ということは、安くなった原油への投資に興味があるはずです。
「今原油を買って将来値上がりしたら、大儲けできるんじゃない?」と。
1万円資産運用編は、1万円以内で投資ができる金融商品をご紹介するカテゴリですから、以下では1万円以内という超ローリスクで原油に投資する方法をご紹介します。
原油に投資する3つの上場投資信託
超ローリスクで原油に投資する方法、それは株式市場を通じて売買できる原油関係の投資信託へ投資をすることです。
投資信託のうち、株式市場で株式と同様に売買でき、株価指数などに連動する投資信託を上場投資信託(ETF)と呼びます。
ETFの詳細は、株式と投資信託のいいとこ取りをしたETFで資産運用!をご覧ください。
このETFの中に、間接的に原油に投資できるETFがいくつかあります。
- WTI原油価格連動型上場投信
- NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信
- ETFS原油上場投資信託
WTI原油価格連動型上場投信
WTI原油価格連動型上場投信は、シンプレクス・アセット・マネジメントが組成する上場投資信託で、ニューヨーク商業取引所で取引されるウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の価格に連動しています。WTIとはアメリカのテキサス州などで産出する高品位な原油のことです。
NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信
NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信は、野村アセットマネジメントが組成する上場投資信託で、野村證券金融工学研究センターが定めたNOMURA 原油インデックスに連動しています。
ETFS原油上場投資信託
ETFS原油上場投資信託は、外国投資法人のETFSコモディティ・セキュリティーズ・リミテッドが組成する上場投資信託で、DJ UBS(Dow Jones UBS WTI Crude Oil Subindex)WTI原油商品指数に連動しています。
原油ETF3本の特徴とは?
3本より専門的な違いは、下記リンク先が詳しいと思います。
いずれのETFも原油価格に連動するように作られているため、原油価格が上昇するとETFの価格が上がり、原油価格が下落するとETFの価格も下がるようになっています。
名称や組成会社、対象とする指数に違いはあるものの、その投資スタイルは一緒です。
原油インバース指数もあるよ
上述の3本は原油価格と同じ動くETFですが、ETFに似た商品の中に原油価格と相反するものあります。
それが、NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ベアETNという名のETNです。
このETNは、原油価格が下落すると値を上げ、原油価格が上昇すると値が下がるという特徴があります。
原油の下落で値を上げた結果、1口2万円近くにもなっているため、本カテゴリでは詳しく説明しません。
もし、原油価格がまだまだ下がるとお考えでしたら、NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ベアETNに投資をしてみるのも良いと思います。
ここまでのまとめ
商品名 | WTI原油価格連動型上場投信 | NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 | ETFS原油上場投資信託 | NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ベアETN |
---|---|---|---|---|
証券コード | 1671 | 1699 | 1690 | 2039 |
種別 | ETF | ETF | ETF | ETN |
原油価格との関係 | 相関 | 相関 | 相関 | 逆相関(インバース型) |
※この他、NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN(#2038)というETNもあります。
以下では、安価で投資しやすいWTI原油価格連動型上場投信を詳しく紹介します。
WTI原油価格連動型上場投信って?
原油取引は先物取引が良く知られており、WTIもWTI原油先物があります。
先物取引は、将来その指数・商品価格が上昇する・下落することを見込んで予め売買をしておく取引方法です。
FX同様、先物は証拠金(担保)を支払って高額の取引ができる為、大きな利益を得やすいのですが、失敗すると多額の借金を背負う可能性があります。
先物は運用に失敗すると危ないのです。
そこでWTI原油価格連動型上場投信の登場です。
WTI原油価格連動型上場投信は、ETFを運用する機関投資家が原油先物取引を行うことで、WTI原油先物価格に連動した価格変化を示します。
この上場投信に投資することで、私たちは借金することなく間接的に原油先物へ投資をしている効果が得られます。
ただし、WTI原油価格連動型上場投信が先物取引を利用する点で以下のようなデメリットも持っています。
先物取引を利用しているデメリット
先物取引では先物を保有できる期間が決まっており、その取引期日のことを限月と呼びます。
限月を迎えると、現在保有する先物を清算し、新たに先物を建てるロールオーバーが行われます。
ロールオーバー時に新たに取得する際、現在の限月よりも次の限月の価格が高い場合、安く売って高く買うために生じる損失(コンタンゴ)が発生する場合があります。
コンタンゴが繰り返すとその分だけ損失も積み重なって行くため、WTI原油価格連動型上場投信の価格に対してマイナス側に働きます(原油に限らず、デリバティブ取引を扱うETFにはすべてその可能性が生じます)。
このような特徴から、WTI原油価格連動型上場投信は数十年後の将来を見据えて投資するより、直近で大幅な反発があるかどうかを重視して取引するのに向いていると言えます。
WTI原油価格連動型上場投信は1万円で投資できるの?
WTI原油価格連動型上場投信も1万円以内で投資できます。
最新価格は証券会社等のウェブサイトをご覧になって欲しいのですが、おおよそ2,000~4,000円程度の間で取引されています。
最初に本記事を執筆した日である2015年1月6日時点で、WTI原油価格連動型上場投信の終値は4,435円でした。
売買単位は1口からですので、この日の価格なら4,435円から売買可能でした。
2015年1月6日時点で本ETFの最安値は、2011年10月4日に原油価格が75.67ドルまで下落した際に記録した3,950円でした。
当時、原油価格はそれほど安くは無かったものの、為替が円高だったため最安値となりました。
2015年1月6日以降、原油価格は一時下げ止まり傾向にあったものの、OPECが減産しないことや約40年ぶりのアメリカ原油輸出発表を受け、再び下落する傾向にあります。
2015年12月22日現在でWTIの価格は35ドル前後、WTI原油価格連動型上場投信の価格は2,300円程度まで落ちています。
2016年1月には30ドルを割る場面さえ見られ、それにあわせてWTI原油価格連動型上場投信の価格も下落しています。
1万円の投資で利益が出るの?
このETFを買うことで利益が出せるかはとても難しい質問です。
原油価格が上がらなければ、本ETFの価格も上がらないからです。
今後の長期的な原油価格見通しは、識者・アナリストの判断も分かれています。
原油価格が下がっている理由として、中国を中心とする新興国の景気減速と、中東諸国など原油産出国が原油の減産を行っていないことが挙げられます。
特に後者は、アメリカのシェールガス採掘が深く関わっています。
一方、過度の価格競争から米国の石油リグ(掘削装置)の稼動数が減少しているという報告もあります。
そのため、原油の下落は一服し今後は上昇していくのでは?と考える見方もあります。
短期的に見た場合、原油価格は数ドル範囲で振れているため、適切なタイミングで買えれば利益を出せます。
こちらはデイトレのセンスが問われそうです。
分配金ってもらえないの?
本ETFは過去に分配金を出していません。
原油が分配金や配当金を生む性質の商品ではないので、将来も分配金は出ないと思います。
ETFからの分配金に興味がありましたら、分配型ETFで夢の分配金生活を目指すをご覧ください。
原油ETFってどこで買えるの?
いずれのETFも株式市場に上場しており、通常の株式と同様に売買出来ます。
詳しくは原油や金に投資を始める方法をご覧ください。
投資リスク
原油価格は毎日変動しているため、購入金額の元本が保証されない点が挙げられます。
特に2014年以降は変動幅が大きいため注意が必要です。
また、「日経・TOCOM 原油ベアETN」のようなETNの実体は債券です。
債券価格は発行体(運用会社)の信用に左右されるため、信用が無くなれば、お金は紙くずになります。
まとめ
原油への投資例として、WTI原油価格連動型上場投信について簡単にご紹介しました。
まとめると、
- 原油に投資するなら、原油先物のほかにも原油価格に連動するETFを利用できる
- 原油ETFは1万円以内で購入でき、借金の可能性も無い
- 分配金は出ないため、不労所得生活目的の保有には向いていない
です。
原油安の昨今、なんだか買ってみたい気もしますが、正直今買うには大きな勇気が必要です
(一方で、株式投資では、「他人と違うことをしなさい」という「人の行く裏に道あり花の山」という格言もあります)。
私自身は、原油価格は当面下落基調が続くと思っていますので、もう少し下がったところで1口ぐらいは買ってみたいと思っています。
約4,000円の投資ならば、損失が出てもおいしいものをちょっと我慢するだけです。