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機関投資家の仕事内容を教えてください!FPの戸田薫さんにインタビュー!

2017年10月某日、筆者は関西でご活躍されるファイナンシャルプランナーの戸田薫さんに突撃インタビューしてきました!

ASSETS TRAVERSE(アセットトラバース)(公式サイト)

戸田さんはかつて機関投資家としてご活躍されたあと、その経歴を生かして個人を支援されるファイナンシャルプランナーに転進されました。

そこで、今回は、

  • 機関投資家ってどんなお仕事?
  • ファイナンシャルプランナーにはどんな相談ができるの?

という2本立てでインタビューさせていただきました。

本記事は、戸田さんが機関投資家としてご活躍されていたときのお話。

  • 機関投資家として働く方法
  • 機関投資家の仕事内容
  • 機関投資家として働いて楽しかったことや辛かったこと

など、普段私たちが知ることのない世界の話を、いろいろ詳細にお話しいただきました。

ファイナンシャルプランナーに相談する方法を教えてください!元・機関投資家でFPの戸田薫さんにインタビュー!」では、現在活躍されるファイナンシャルプランナーのお仕事について伺いましたので、ぜひ併せてご覧ください。

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機関投資家になるためには

―――機関投資家になる方法を教えてください

機関投資家になる方法というのは、若い方が自ら「なりたい」と手を挙げてなれるものではないです。

そもそも機関投資家の種類って何があるかというと、銀行や証券等の金融機関、生命保険、年金(GPIF)、あとはヘッジファンドなどのファンド運用会社があるんですけど、ヘッドハンティングされて、ファンドマネージャーや運用担当者になるケースも多いです。

私は約20年間金融機関に勤めてて、若い頃は営業も担当させていただいたんですけども、異動で6年間、運用のセクションに配属させていただききました。

一点言えるのは、金融機関に属してて、CFP®(Certified Financial Planner:国外でも通用するライセンス。日本では日本FP協会が認定するファイナンシャルプランナー資格のうち、最高峰の位置づけ)という国際ライセンスを持っているのが私1人だったんですよね。

その資格を持っていたから引き上げていただいたのもあるのかな、と認識しています。

―――機関投資家として活動されていた時点でファイナンシャルプランナーの資格をお持ちだったのですね

はい、持っていました。

これは個人的な見解なんですけども、私たちが取引で相対するのは証券会社の法人部隊なんですけど、彼らはエリートなんですよ。

四季報とかご覧頂くと、証券会社の年収が載っていると思うんですけど、その年収を引き上げているのが彼らなんです。我々はエリートの法人部隊と勝負しなければいけない。

機関投資家は取捨選択して理に叶ったものを選んでいかなければいけないので、経済や商品に関する知識がなく、分からなく買ってしまうと会社の損失になってしまいます

やっぱりそういう点で、知識を証明するファイナンシャルプランナーの資格を持っていたのも影響したのかな、と考えております。

機関投資家ってどのような仕事をしていますか

仕事内容について教えて下さい

―――機関投資家ってどういうお仕事をしているのですか

はい、みなさんから預かったお金で有価証券(株式や債券などのこと)を購入して、キャピタルゲイン(値上がり益のこと)やインカムゲイン(配当や利子収入のこと)などの利潤を追求していくのが機関投資家の仕事です。

例えば、みなさんがお金を集めて、銀行通帳にお金を入れらてると思うんですけども、預金って銀行側から見れば「負債」なんですよ。みなさん「お金を預けている」とおっしゃられますけども、実際には銀行に「お金を貸してる」んです。

それを預からせていただいて、まとめて有価証券を購入して、利益を追求して行くのが銀行系の機関投資家の仕事です。

ヘッジファンドや投資信託も同じで、基本的にお金を預けていただいて投資するというのは変わりないです。

少し違うのは生命保険会社や年金。生命保険は掛け金を運用しますよね。キャピタルゲインやインカムゲインの範囲内で予定利率という利息をつけて、お客様に利息として還元するのが生命保険。

年金はご存知だと思うんですけども、皆さんが一定額年金を掛けられているものを将来のために運用していまね。

なので、それぞれ運用の仕方はばらばらなんですけども、運用して利益を得ることは一緒ですよね。

―――どんな金融商品を取引していましたか

主に債券で、あと株式や転換社債(ある一定の条件を満たしたら株式に転換請求可能な社債のこと)などでポートフォリオを組んでいました。

だいたい当時で数百億円ぐらい運用していたんですけども。

―――すごい金額ですね!

数字だけの世界ですね。現金は見なくて数字だけが動いている世界です。メガバンクに比べれば小規模ですが。

例えば債券でしたら、業界の取引単位は1億円単位なんです。それ以下は「端債(はさい:債券市場で1億円以下で取引される債券のこと。対義語はロット債)」と呼ばれ、安く買い叩かれてしまうんですよ。

なので、何千万円という単位での取引は基本的に無いんです。

1日の流れについて教えて下さい

―――機関投資家の一日について教えてください

朝出社が早いんですよ。

―――何時ぐらいなんですか

7時とか7時半ぐらいとか。

―――早いですね

ええ。新聞とか夜中のニュースとか見て出社するんですけども、職場では日経新聞を中心に新聞各社、ほぼほぼ取り揃えていて斜め読みしています。証券会社からレポートも送られてきて、それも読んだりしています。

情報端末はご存知ですか?ブルームバーグとか(ブルームバーグプロフェッショナルサービス)、QUICK(クイック)、ロイター通信などの。この情報端末にニュースが上がってくるので、新聞に載ってないようなニュースを読み込んだ後、ミーティングなどが8時半頃から20分ぐらいありますね。

その後、会社にも寄るかと思うんですけど、私がいたところは、他の証券会社に電話をかけて情報収集します。

9時に日本市場が開く(寄付:よりつき)んですけども、そこから取引が始まります。

日本市場は15時に終わりまして(大引:おおびけ)、夕方は比較的早く終わるんですけども、たとえば17時半からヨーロッパ市場が始まって、夜はニューヨーク市場があるので、自宅に帰ったとしてもニュースは絶えず見ています。

なので、ニュース見ているのは1日中ですか、24時間ですね。

―――大変ですね。休める暇はあるんですか

土日の相場は開いてないので、カレンダーどおりに休んでいました

機関投資家と個人投資家の違いとは?

場当たり的な取引は許されないシビアな環境

―――個人投資家と機関投資家の違いってどこにあると思いますか

個人投資家は取引する金額が小さかったり、取引ルールが無かったりするんですけども、そういった点で機関投資家とは違います。

機関投資家が個人投資家とまったく違うのは、決算があるんですよ。決算があるために損ができない。3月決算に向けて、必ず利益を確保しなければいけないというが大前提ですね。

ので、例えば個人投資家のように「塩漬け(しおづけ:株や債券の評価額がマイナスになってしまい、売れずに売れない状況のこと)」なんてありえない。

あとは、もちろん運用しているお金が、自分のお金ではないことも違いですね。

―――塩漬けで評価損を抱えているのもダメなんですか

基本的に少ないです。もし、個別銘柄で損をしたとしても、どこかで穴埋めをしなければいけないのが機関投資家ですね。

―――シビアですね

シビアです。だからルール化されてるんです。

ブレグジット(イギリスのEU離脱選挙)で日本市場の相場が急落した理由

―――ロスカットルール(購入後x%以上の評価損を抱えたら売却すること)もあるんですか

あります。

運用しているところを「フロント」と言うんですよ。「フロントオフィス」って呼ばれる最前線で運用しているセクションなんですけども、あとバックオフィスというのがありまして、バックオフィスというのは監査をする機関なんですよ。

で、例えば神戸製鋼(2017年10月にアルミ製品データの改ざんに関する不祥事が発覚)のような銘柄を持ってたとするじゃないですか。そうすると(2017年10月のインタビュー時点で)株価が40%近く下がっているんですけども、その場合はその何割かを売却しなければいけない。

ALM(Asset Liability Management:アセットライアビリティマネジメント。現在の金融環境に合わせて、資産と負債の構成のバランスをとり、リスクの最小化と利益の最大化を目指す経営管理手法)委員会というのが召集されるんですよ。そこにフロントが呼び出されて、「どうするんだ」と。

例えば、2016年にブレグジット(Brexit:2016年6月にイギリスのEU離脱を問う国民総選挙が行われ、EU離脱が可決された)が行われたのが、向こうの時間で6月23日、6月24日の午後だったんですけども、日本市場は昼から急落しているんですよね。全ての銘柄が。

24日の東京市場は現物株取引の昼休み時間中に、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の開票速報で“離脱派の勝利が確実”と伝えられたことから、外国為替市場でポンド、ユーロが急落。これに連動して対ドル円相場が一時、1ドル=99円近辺まで急騰した。これを受けて、日経平均株価指数先物が前日比1000円を超える急落となり、現物株市場も後場寄り付きから一気に下げ幅を拡大した。

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こういった時というのは正にこれなんですよ。ロスカットルールに抵触を避けるため、売りが売りを呼んでる。株価が下がりますよね。すると、他の金融機関が持っている銘柄がどんどん下がって行くので、また、ロスカットルールに抵触してくるんです。

なので、ロスカット水準に抵触する前に売ってしまうというスパイラルが起きた

個人みたいに「月曜日まで持っておこうか」とか「買い足すか」とはならない。というのが、「リーマンショック」だったり「ブレグジット」だったり。ロスカットルールがあるから、売りが売りを呼ぶスパイラル的なものがおきやすい。

ここが金融機関と個人投資家の違いですよね。

機関投資家として辛かったこと・楽しかったこと

機関投資家として辛かったこと

―――機関投資家として辛かったことを教えてください

朝が早いこと笑

―――笑

それは冗談なんですけども、巨額を運用するので、投資戦略を練って投資したら裏目に出てしまったとき。 あと、「リーマンショック」や「東日本大震災」がおこったときは辛かったですね。

震災がおこってテレビで映像が出て、外国人投資家が日本市場を売り込んでいる中で、投資できるかと言われたら、やっぱり我々も感情が働いて投資などできなかったんですよ。

不謹慎な発言で申し訳ないのですが、そこを割り切って投資していれば儲かってるんですよ。個人だったら、儲かった分を寄付するとかね、そういうこともできるんですけど、機関投資家はできないんですよ。自分のお金じゃないので。

地震の被災者のこともありますし、心情的に復興支援を最優先に考えなくてはならない状況で、銘柄もどんどんマイナスも膨らんでいくわけですし、両面で疲労困憊って感じで辛かったですね、さすがに。

仮に「投資しようか」と言っても、上司が「うん」と言わないですよね。当然ながら心情的に、「お前は人間か」って逆に立たされるときですもんね。私が上司だったとしても、同じ事を言うと思います。

「リーマンショック」の時もどんどん評価損が重なって行くので、もう毎日のようにALMやってましたもんね。

機関投資家として楽しかったこと・よかったこと

―――逆に機関投資家として楽しかったことを教えてください

情報が命なので、学ぶことにストイックになれるんですよ。あと、株の運用とか債券の運用とか自然と学べるのも良かったですし。

時々、他の金融機関を訪問することもあるんですよ。いつも電話でやりとりするトレーダーを訪問して、いろんな話を聞いたりして。

そこに有名なエコノミストやアナリストとか来てくださって、貴重な経験をさせていただいて、凄くよかったですよね。テレビに出ていらっしゃる有名な方にお会いできたり。

投資が好きな方なら、ストイックになれる環境があったというのが大きかったですね。

ただ、機関投資家って自己の運用が一切禁止なのですよ(証券会社など、運用に携わる仕事に就く方は、内規で個人の投資が禁じられるのが一般的)。大量の情報が入ってくるので、裏でこっそりとネット証券で取引したりするのは絶対にダメなんですよね。

その期間、「リーマンショック」のようなこともありましたけども、色々学ばせていただいて、楽しかったというか良かったと思いますね。

―――退職後は自己で運用するのは大丈夫なんですか

それは大丈夫です。

―――今はご自身で運用されていますか

もちろんやっています。それはやらないとね笑

―――ですよね笑

やらないと勿体ないよね。

まとめ

  • 機関投資家になるには金融機関に勤務し、異動でのチャンスを狙う。またはヘッドハンティングされるのも1つの方法
  • 自分のお金ではない巨額の資金を運用するため、運用上のルールが厳しい。特に相場の急落や大幅な下落が続く相場では疲労困憊するかも
  • 1日中相場とニュースに向き合うストイックな環境。本当に投資が好きな人に向いている

戸田さん、貴重なお話をありがとうございます!

機関投資家って損をできないってプレッシャーが半端ない反面、投資が好きな人にとってはこの上ない環境なのだろうな、と感じました。

「ロスカットルールのために売りが売りを呼ぶ」というのが勉強になりました。今後、ブレグジットや2016年11月のアメリカ大統領選挙のようなことがあれば、もうすこし逆張りすると、機関投資家の裏をかけるかも、と思っています。

機関投資家からファイナンシャルプランナーとして転進された以降の話は、「ファイナンシャルプランナーに相談する方法を教えてください!元・機関投資家でFPの戸田薫さんにインタビュー!」にて紹介していますので、ぜひぜひ併せてご覧ください。

ファイナンシャルプランナー・戸田薫さんに相談を申し込む手順

ASSETS TRAVERS(アセットトラバーズ)ウェブサイト

ウェブサイトからお申し込みください。ご相談前に何かご用意いただく必要はありません。

初回の相談料は10分あたり1000円で、おおよそ2時間程度のご相談になります。

原則、対面でのご相談となります。関西を中心に活動されていますので、あなたが関西在住ならばアクセスしやすいと思います。出張をご依頼することも可能ですが、その場合には出張料が発生します。

戸田さんはファイナンシャルプランナーの国際ライセンスで、かつ日本最高のライセンスであるCFP®(Certified Financial Planner)を保有しています。

あなたが信頼できるファイナンシャルプランナーをお探しの場合には、検討してはいかがでしょうか。

ASSETS TRAVERSE(アセットトラバース)(公式サイト)

  • 金融商品の時価は変動しますので、投資元本を割り込む可能性も承知の上で投資するようになさってください。
  • 本コンテンツで紹介している金融商品は、将来必ず値上がり・利益が生じるとは限りません。
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